「あずかる」を漢字で書くとき、「預かる」と「預る」、どちらが正しいのか迷ったことはありませんか?
私は会社で文書を作るたびに、この表記で手が止まる経験を繰り返してきました。「預り証」か「預かり証」か、「お預かりします」か「お預りします」か……。Wordの変換候補に両方出てくるので、余計にどちらが正解かわからなくなるんですよね。
実はこの問題、「どちらが正しい」ではなく「どの場面で使うか」が問われています。文化庁が定めたルールをきちんと理解すれば、迷いがゼロになります。
この記事では、「預かる 送り仮名」の正解を、文化庁の公式ルールに基づいてわかりやすく解説します。「動詞として使う場合」と「名詞・複合語として使う場合」を分けて説明するので、ビジネス文書や公用文でも自信を持って使い分けられるようになります。
【結論】「預かる」と「預る」、どちらが正しい?
まず最初に結論をお伝えします。
どちらも正しい表記ですが、使う場面が違います。
| 場面 | 正しい表記 |
|---|---|
| 一般的な文章・ビジネス文書(動詞形) | 預かる(本則) |
| 一般的な文章・ビジネス文書(動詞連用形) | 預かり(本則) |
| 公用文・法令の複合語(名詞形) | 預り金(公用文の規定による) |
| 動詞として使う場合(公用文含む) | 預かる(公用文でも本則のみ) |
ここでポイントが一つあります。「預かる」(動詞)と「預り金」(名詞・複合語)では、適用されるルール自体が異なります。この区別が、多くの解説記事が説明しきれていない部分です。
それぞれ順番に解説します。
「預かる」送り仮名の基本:文化庁「送り仮名の付け方」を読み解く
送り仮名の基本原則とは
送り仮名とは、漢字に添えるひらがなのことです。たとえば「書く」の「く」、「走る」の「る」がそれにあたります。
送り仮名の付け方には、国の公式な基準があります。1973年(昭和48年)に内閣告示された「送り仮名の付け方」です。法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など、社会生活全般での使用を対象としています(個人の表記には及ばない点が注意事項です)。
「あずかる」が「預かる」になる理由
基本原則は「活用語尾をひらがなで送る」です。
「あずかる」は五段活用の動詞で、語幹は「あずか」、活用語尾は「る」です。この原則だけに従えば「預る」と書けばいいことになります。
しかし「あずかる」には、対応する他動詞「あずける(預ける)」が存在します。
ここで登場するのが「通則2(本則)」です。
活用語尾以外の部分に他の語を含む語は、含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。
「あずかる」の語幹「あずか」には「あずける(預ける)」が含まれています。「預ける」は「ける」が活用語尾なので、「か」まで送り仮名が必要です。これに準じて「あずかる」も「かる」と送ることになります。
→ 「預かる」が本則による正しい表記
「預る」はなぜ存在するのか?
通則2には「本則」のほかに「許容」があります。
読み間違えるおそれのない場合は、活用語尾以外の部分について、送り仮名を省くことができる。
「あずかる」を「預る」と書いても、多くの場合は読み間違えにくい——という判断で、「預る」も許容された表記として認められています。
ただし、「預る」には一つの問題があります。「あずける(預ける)」と見分けがつきにくいのです。「預る」を見た瞬間、「あずかる」とも「あずける」とも読めてしまいます。この曖昧さが、「本則は『預かる』」とされている理由でもあります。
動詞・名詞・複合語、それぞれの正しい表記
ここが、この記事で一番重要なポイントです。多くの解説記事が混同している部分でもあります。
動詞として使う場合:常に「預かる」「預かり」
「あずかる」を動詞として使う場合は、公用文でも一般文書でも「預かる」が基本です。
- 荷物を預かる(動詞)→「預かる」
- 荷物を預かりました(動詞連用形)→「預かり」
- お荷物は責任を持って預かります→「預かり」
なぜ公用文でも「預かる」かというと、動詞(活用のある語)の単独の送り仮名は、基本的に本則に従うからです。公用文の特例規定(後述)は、活用のない複合語に限定されています。
名詞・複合語として使う場合:「預かり」か「預り」か
「あずかりきん」のように名詞・複合語として使う場合は、一般文書と公用文で異なります。
【一般文書・ビジネス文書の場合】
本則に従い、「預かり金」が基本表記です。許容として「預り金」も使えますが、混乱を避けるには「預かり金」を選ぶほうが無難です。
【公用文・法令の場合】
公用文には特別なルールがあります。1981年(昭和56年)の内閣訓令「公用文における漢字使用について」によって、活用のない複合語(名詞形)については「通則6の許容」を積極的に適用し、送り仮名を省くことが定められています。
その列挙語の中に、はっきりと「預り金」と記されています。
つまり公用文では「預り金」が義務的な表記になります。「預かり金」と書くのは誤りではありませんが、公用文の慣例からは外れます。
「預かる」「預る」使い分け一覧表
| 用語 | 一般文書・ビジネス | 公用文・法令 | 備考 |
|---|---|---|---|
| あずかる(動詞) | 預かる | 預かる | 両方とも「預かる」 |
| あずかり(名詞形) | 預かり | 預かり | 単独の名詞形も「預かり」 |
| あずかりきん | 預かり金 | 預り金 | ここだけ分かれる |
| あずかりしょう | 預かり証 | 預り証 | 複合語は同じ考え方 |
| お預かりします | お預かり | お預かり | 動詞なので「かり」 |
この表を見るとわかるとおり、日常生活で迷いが生じやすい「お預かりします」「預かり証」については、「預かり」が正解です。「預り証」「お預りします」は、一般文書では許容の範囲内ですが、本則からは外れた表記です。
「あずかり」「あずかる」をひらがなで書く場合の整理
「あずかる 送り仮名」「あずかり 送り仮名」で検索された方のために、ひらがなから漢字表記を整理します。
「あずかる」→「預かる」(本則)/「預る」(許容)
どちらを使うかは場面によります。迷ったら「預かる」を選べばまず問題ありません。ただし「預る」と「預ける」は一字違いなので、混乱を招かないよう「預かる」を使うほうが親切な表記といえます。
「あずかり」→「預かり」(本則)/「預り」(許容・複合語のみ)
名詞単独の場合は「預かり」が基本です。複合語になると場面によって分かれます。
「預かり」と「預り」どちらが正しいか:よくある疑問に答える
Q. 「お預かりします」と「お預りします」、どちらが正しいですか?
「お預かりします」が正しい表記です。
「お預かりします」の「預かり」は動詞(預かる)の連用形です。動詞の送り仮名は本則に従うため、「預かり」となります。「お預りします」は許容の範囲内ですが、ビジネス文書では「お預かりします」を使うのが安全です。
Q. 「預かり証」と「預り証」、どちらを使うべきですか?
一般のビジネス文書では「預かり証」、公用文では「預り証」が適切です。
「預かり証」は本則による表記で、読みやすさを優先しています。「預り証」は許容(公用文では積極的適用)による表記です。銀行や一般企業が発行する書類であれば「預かり証」を選ぶほうが自然です。
Q. パソコンの変換では「預り」と「預かり」のどちらが先に出ますか?
IME(日本語入力システム)によって異なりますが、一般的に「預かり金」が先に候補として表示されることが多いです。これは日常的な使用頻度を反映したものです。公用文を作成する際は、意図的に「預り金」を選ぶ必要があります。
Q. 「預け金」と「預かり金」の違いは?
意味が全く異なります。
- 「預け金」 → 「預ける側(お金を預けた人)」の立場の表現
- 「預かり金」 → 「預かる側(お金を受け取って管理する側)」の立場の表現
たとえば銀行であれば、顧客は「預け金」をする立場、銀行は「預かり金」を管理する立場になります。文脈によって正確に使い分けてください。
Q. 「預かる」の「預」は常用漢字ですか?
はい、「預」は常用漢字です。音読みは「ヨ」、訓読みは「あず(かる)・あず(ける)」です。常用漢字表の訓読みの例欄には「預かる」と表記されており、これが本則の根拠にもなっています。
Q. 「預かる 預る」という2種類の表記が存在するのはなぜですか?
日本の送り仮名ルールに「本則」と「許容」があるためです。本則は「活用語尾だけでなく、語幹に含まれる他の語に合わせて送り仮名を付ける」という考え方から「預かる」を採用します。許容は「読み間違えるおそれがない場合は短くしてよい」という考え方から「預る」も認めます。どちらも誤りではなく、日本語の表記の柔軟さを示しています。
Q. 「預かる 預る 違い」を一言でまとめると?
「預かる」は本則(正式・推奨)の表記で、「預る」は許容(簡略・認められているが非推奨)の表記です。一般的なビジネス文書や日常の文章では「預かる」を使えば、まず間違いありません。
実際のビジネス文書での使用例
「預かる」を使った文例(一般ビジネス文書)
受付・接客の場面:
- 「お荷物をお預かりいたします」
- 「本日のお鞄は、フロントにてお預かりします」
- 「ただいまお名刺を預かりました」
領収書・書類:
- 「預かり金 50,000円 領収いたしました」
- 「預かり証 発行日:2026年○月○日」
- 「上記の物品を預かりました」
経理・会計文書:
- 「預かり金の精算について」
- 「預かり金管理規程に基づき処理いたします」
メール文例:
- 「先ほどのお見積もり書、確かに預かりました」
- 「ご依頼の資料を預かりましたので、順次確認いたします」
「預り金」を使った文例(公用文・法令文書)
法令・規則:
- 「預り金に関する規定(第3条)」
- 「預り金台帳の記載要領について」
行政文書:
- 「預り金の返還請求書の様式について」
- 「預り金に係る事務の取扱いを定める」
注意が必要な混同例
以下のような誤用に注意しましょう。
- 誤 「お預りします」(動詞を使うなら本則に従い「お預かりします」が適切)
- 正 「お預かりします」
- 誤(一般文書で)「預り証をお渡しします」(公用文以外では「預かり証」が本則)
- 正(一般文書)「預かり証をお渡しします」
同じように悩みやすい送り仮名の例
「預かる」と同じく、自動詞・他動詞の対応があって送り仮名が複雑になる語の例です。
| 語 | 本則 | 許容 | 公用文複合語 |
|---|---|---|---|
| あずかる | 預かる | 預る | 預り金 |
| かしつける | 貸し付ける | — | 貸付け |
| かりいれる | 借り入れる | — | 借入れ |
| うけとる | 受け取る | — | 受取り |
| たてかえ | 立て替え | — | 立替え |
このように、複合語になると公用文では送り仮名が省略されるパターンが多くあります。公用文を扱う方は、内閣訓令の一覧表を手元に置いておくと便利です。
漢字の使い分けや送り仮名で迷いやすい例は、こちらのまとめ記事でも一覧で確認できます。
▶ 漢字の使い分け・送り仮名まとめ|公用文基準で迷わない完全ガイド
送り仮名と似たテーマで、「どちらが正しいか」で迷いやすい漢字の使い分けもあります。
まとめ:「預かる」送り仮名の選び方
「預かる 送り仮名」の問題は、次の3つのポイントを押さえれば解決します。
ポイント①「動詞」として使うなら、常に「預かる」
場所を問わず、動詞として「あずかる」を使うときは「預かる」が正しい表記です。公用文でも例外ではありません。
ポイント②「名詞・複合語」として使うなら場面で分ける
一般文書・ビジネス文書では「預かり金」(本則)。公用文・法令では「預り金」(通則6の許容を適用)。迷ったら「預かり金」を選べば一般的な場面ではまず問題ありません。
ポイント③「預かる」と「預る」の混同に注意
「預る」は「あずける(預ける)」との視覚的な混同を招きやすいため、本則の「預かる」を使う方が読み手への配慮になります。
覚えておきたい判断フローチャート
「あずかる/あずかり」を書くとき
↓
動詞として使う?
→ YES → 「預かる」「預かり」(常に)
→ NO(名詞・複合語)
↓
公用文・法令?
→ YES → 「預り金」「預り証」など(送り仮名省略)
→ NO(一般文書)→ 「預かり金」「預かり証」など(本則)
FAQ
Q1. 「預かる 送り仮名 どっち」と調べた人へ:一言で言うと?
日常のビジネス・会話では「預かる」が正解です。「預る」も認められていますが、「預ける」と見分けがつきにくいため避けるのが無難です。
Q2. 「預り」と「預かり」、どちらが正しいですか?
どちらも正しいですが、推奨は「預かり」(本則)です。「預り」は許容表記で、公用文の複合語(預り金・預り証)では積極的に使われます。
Q3. ビジネスメールで「お預りします」は失礼ですか?
失礼ではありませんが、正式なビジネス文書では「お預かりします」を使うほうが安全です。「お預かりします」は本則に従った表記であり、相手に丁寧な印象を与えます。
Q4. 「預 る 預かる 違い」をわかりやすく教えてください。
「預かる」は正式・推奨(本則)、「預る」は略式・許容という位置づけです。どちらも誤りではありませんが、「預かる」のほうが「預ける」との混同リスクが低く、読みやすい表記です。
Q5. この記事の内容は何をもとにしていますか?
文化庁が告示した「送り仮名の付け方」(1973年・昭和48年内閣告示)と、内閣訓令「公用文における漢字使用について」(1981年・昭和56年)に基づいています。公式資料は文化庁のウェブサイトから確認できます。
この記事でご紹介した使い分けは、文化庁の「送り仮名の付け方」および内閣訓令「公用文における漢字使用について」に基づいています。公式資料を確認したい場合は、文化庁のウェブサイトから「送り仮名の付け方」を検索してみてください。
送り仮名は、読み手への配慮でもあります。正しい表記を選ぶことが、伝わりやすい文章への第一歩です。ぜひ今後の文書作成にお役立てください。
