「賜物」と「賜」の違い｜その意味と使い方、関連表現について

日常やビジネスシーンでよく目にする「賜物」という言葉は、「努力の賜物」や「苦労の賜物」といった表現で頻繁に使われています。

この言葉には、「賜」や「たまもの」という表記のバリエーションもあります。

この記事では、「賜物」の意味を詳しく説明し、類似する表現との違いについても触れていきます。

「賜物」と「賜」の意味と使用例

まず、「たまもの」の意味について辞書で確認すると、「賜」と「賜物」の用語が見つかります。

この言葉が持つ意味は以下の通りです。

これらの定義に基づき、「賜」や「賜物」のどちらも辞書に正確に記載されています。

この言葉は恩恵と成果の両方の意味で使用可能ですが、普段は成果を示す文脈でよく使われます。

「たまもの」という言葉には「賜物」と「賜」という二つの表記がありますが、どちらを使用するか、または「たまもの」とひらがなで表記するかは、文脈によって異なります。

「たまもの」という言葉は「たまう」という動詞から来ており、「目上の人から目下の者へ与える」という意味があります。この表記は歴史的に多様な形で使用されています。

現代では「賜」は「恩賜」「下賜」「賞賜」「賜物」「賜与」といった熟語で使用されることがありますが、単独で使用されることもあります。

文学作品では、三島由紀夫の『潮騒』や夏目漱石の『明暗』などで「賜物」という表記がよく使われ、芥川龍之介の作品では「賜もの」という表記も見られます。

これらの表記には本質的な意味の違いはありませんが、現在の常用漢字表では「賜」の読みが「シ・たまわる」として記載されており、「たま」や「たまう」という読みは公式には認められていません。そのため、現代文書では「たまもの」をひらがなで表記するのが一般的です。

日々の生活やビジネスシーンで見かける「たまもの」という言葉には、「賜物」「賜」「たまもの」といくつかの表記法があります。現代では「たまもの」をひらがなで書くことが多くなっています。特にメディアや公式文書では、ひらがな表記が好まれています。

公式文書では、「たまもの」をひらがなで書くことが推奨されており、静岡県が発行する『公用文の用字・用語・送り仮名の例集』では「賜物」とは書かずに「たまもの」とすることが指示されています。これは国の公式な文書作成ガイドラインに準ずるもので、信頼性の高い文書作成基準とされています。

漢字の「賜」が一般的に「たま」とは読まれないため、公用文では「たまもの」をひらがなで表記することが適当だとされています。

小説や手紙、ビジネス文書など、他の文書ではどの表記を使用しても問題ありませんが、文脈に応じて適切な表記を選ぶことが大切です。選択する際には辞書の定義を参考にし、「たまもの」という言葉の用途に合わせて選ぶことが良いでしょう。

「たまもの」にはいくつかの類似表現があり、それぞれ微妙な意味の違いがあります。

恩恵（おんけい）
慈悲や恵みを意味し、通常は「恩恵を受ける」「恩恵に預かる」といった表現で使われますが、「賜物」とは違い、努力の結果として得たものという意味は含まれません。
恩寵（おんちょう）
神や君主からの特別な恩恵を指し、主に宗教的な文脈で使用されます。
成果（せいか）
努力や行動の結果として得られた良い成果を指します。これは「賜物」に近い意味を持ちますが、与えられたものという側面はありません。
結晶（けっしょう）
努力や成長の積み重ねが具体的な形となって表れたものを指し、「努力の結晶」として使用されることもあります。また、文字通りの物理的な結晶（例：雪の結晶）を指すこともあります。
産物（さんぶつ）
何らかの原因や背景によって生じたものを指し、「時代の産物」や「研究の産物」といった表現があります。これは良い結果だけでなく、悪いものにも適用されることがあります。

これらの言葉は、それぞれ独自の意味と用途を持ち、「賜物」と同じように使われる場合もあればそうでない場合もあります。